前回は、マックスウェル電磁方程式(ベクトルポテンシャルの削除された)の意味を紹介しました。今回は、ベクトルポテンシャルとは何か見てゆきたいと思います。
ベクトルポテンシャルは、長い間数学的な量(注、ベクトル解析には便利ではあるが、実際には存在しないもの)として考えられてきました。これは、最初のマックスウェル方程式からヘビサイドやヘルツが、「物理的意味を持つ電磁場だけを用いて表現する」ということを主張し、ベクトルポテンシャルを切り捨ててしまったことに端を発しています。ベクトルポテンシャル実体のもつ物理量とみなすことで、古典電磁理論は、ポテンシャルによって書き換えられることになります。これはわかりやすくいえば電磁場は、ポテンシャルによって発生する力場だということです。まずポテンシャルありきというわけです。
この説明では、まだイメージが湧かないと思いますので、これに関連した物理現象として有名な、Aharonov-Bohm効果(AB効果)を簡単に紹介しましょう。
電子が、電磁場が存在しない空間で、物理的影響を受けるかどうかという問題を考えた場合、古典電磁理論から導かれる答は、“影響を受けない”です。このことは、文科系の皆様にも容易に御解りいただけると思います。ではそうでないことが起こったとしたらどのように解釈すべきでしょう。まさにそうでないことが起こっている物理現象をAB効果と呼びます。このAB効果は、1959年に、Aharonovと彼の先生であったBohm効果によって量子力理論により導かれました。
コイルを使い、磁場が、内部には存在するが外部には全く漏れない状態を作り、一点からでた電子線を二つにわけコイルの両側に通しその後、電子バイプリズムで重ねあわせるとしましょう。この重ねあわせにより干渉縞が観察できます。すなわちこの干渉縞により電子の振る舞が観測されるわけです。電子は、電磁場の存在しないコイルの両側を通過しておりますので、従来の古典電磁理論に従えば、物理的影響をうけないことは先ほど述べた通りです。このことは、干渉縞に波面のずれは観測されない(均一に縞ができる)ことを意味します。ところが、実際の結果は、波面のずれが生じるのです。これは、1980年代に日立中央研究所の外村博士により検証されました。
…A(ベクトルポテンシャル 補足)は、大変考えにくい量だが、電子の波に物理的影響をあたえ、しかも干渉縞のずれの形で観測できるとなると、物理量であるとしか考えようがない。
(『数理科学』1977年1月号 電磁気に見るゲージ原理 外村 彰)
この検証によりベクトルポテンシャルは、一部の頑強な否定論者の抵抗はあるものの、現在正当科学では物理量として扱われております。
ここで、AB効果を知らなかった読者の方は、次のような疑問を抱かれたかもしれません。「ベクトルポテンシャルが、正統科学で物理量として定義されているのなら、スカラー波の間違いが正統科学で、充分に検討されていないのは何故か?また物理量として定義されたことにどのような意義があるのか。」
これらの疑問に容易に答えることができないことは、理科系の識者の皆様は充分ご承知のことと思います。というのは、まだスカラーポテンシャルの問題が残されているからです。これらの問題は次回から徐々に取り組んでゆく予定です。