今回は、前回に引き続き、ベアデンの論文から興味深い内容を紹介して行きます。
良く知られているように、古典電磁気学、一般相対性理論及び量子力学の間には重大な矛盾が存在している。現在のところ組み立てられている限りでは、これら三つの理論はたとえヘラクレス級の努力によっても統一できない。特に、電磁気学的現象の第一の作用に関しては、量子力学及び古典電磁気学の依って立つ所は全く一致しない。古典電磁気学は力場を主要な原因であるとみなしており、ポテンシャルに関してはリップサービス程度にしか言及しておらず、主に数学的便宜上のものとして扱っている。一方、量子力学では、ある時期以降(1959年以来)長いこと、力場は単に荷電粒子系の中や表面における結果であり原因ではないと証明してきた。代わりに量子力学は、ポテンシャルが全ての電磁現象の主要原因であることを示して(証明して)きた。荷電粒子系においては、ポテンシャルは干渉したり、全く力場がないところでのAharonov-Bohm効果のような観察可能な電磁現象を引き起こしたりする事ができる。ここに電磁生物効果の研究が現在悲惨な苦境にある理由が横たわっている。
さらに説明しよう。
古典電磁気学理論は、最初マックスウエル(James Cleark Maxwell)により、四元方程式として公式化された。四元方程式代数が現在のところ古典電磁気学が展開されている数学であるが、ベクトルとテンソルのいずれよりもずっと高次のトポロジーを有することに注目して欲しい。現在の“マックスウエルの方程式”のどれ一つも、一般的にマックスウエルに帰因すると教えられているが、マックスウエル自身によっては未だかつてどこにも発表されていない。何を基本方程式と呼びたいかによるが、マックスウエルの本当の方程式は非常に多くの四元方程式であり、それらは1873年に出された彼の本の中の殆ど理解できない章の中に書かれている。
現在の四つの“マックスウエル方程式”は、実際は殆どヘビサイド(Oliver Heaviside)に帰しており、ギプスとヘルツに帰因する程度はより小さい。主要な役者は非常に聡明な、しかし一度も大学に行ったことのない独学者のヘビサイドであった。
マックスウエルの本が出版された時、ヘビサイドはちょうど独学で計算法と微分方程式を学んでいる最中だった。その本を読んで彼は感動し、それからマックスウエルは彼の永遠のヒーローになった。マックスウエルはそれからほどなくして胃ガンで亡くなった。
ヘビサイドは当時の殆ど全ての科学者と同様に電磁力が全ての物理作用の原因であるという古い時代遅れの伝統を信じていた。彼はポテンシャル(という概念)に非常に手こずり、ポテンシャルは“不可解であるからその理論から抹殺されるべきである”と明言した。今や我々は現代量子場理論において、力が結果であって、どんな物の主要原因でもないことを知っている。実際、質量物体上にあらゆる力を発生させるのはその質量物質が仮想粒子をやり取りすることによるのである。今日の基礎物理学者に良く知られているように、“力”はそれが働きかける対象となる質量物体が存在しなければ存在せず、また、質量物体上のポテンシャル勾配の作用がなければ存在しない。我々は真空中に力場が全く存在しないこと、それゆえ、たとえ一般的にそれは力であると仮定されているにせよ、真空中のポテンシャル勾配が力ではないことを知っている。古典電磁気学ではこれら明白な欠陥を今まで修正してこなかった‥古典電磁気学では真空中における力場を規定し、勾配が作用する対象となるどんな質量物体も存在しない場合でさえ、ポテンシャル勾配が力であると規定する。
ヘビサイドは四元方程式理論をも忌み嫌った。一個のスカラー成分と三個の方向成分との結合は、彼の見方によれば“リンゴとミカンの混合”であった。彼はマックスウエルの四元方程式数学が難解なので、エンジニアたちがその用途を決して習得しないだろうということを知っていた。
そこでヘビサイドは単純に、四元方程式のスカラー成分を切り取って廃棄してしまい、それからこの新しい“切り捨ててベクトルになった”バージョンをトポロジーが減少するとはいえ、ずっと簡潔でわかりやすい数学として考案した。彼が知らずに捨て去った物は、四元方程式理論が内部決定論的な、スカラーポテンシャルのベクトル的な電磁構造を捕らえるための能力であった。(彼がスカラー成分を取り除くことによって、電磁力と重力の統一をも廃棄したことが判明しているが、それは私の発表の範囲外である)。彼の死後何年もたってから発見された、彼の書斎の床下に隠されていた論文によると、彼は数年後に小さな上階の部屋の中で孤独な隠遁者として暮らし、ヘビサイドは四元方程式に戻って重力理論に取り組んだ(らしい)。
当時の学術的な刊行物は、ヘビサイドの数学的手法が見かけ上“野蛮”だったので、彼の論文の公表を受け入れなかった。そこでヘビサイドは、今日のおよそ『サイエンティフィック・アメリカン』誌に相当する当時の技術雑誌の中に極めて実際的な論文を公表し始めた。これらの実際的な論文は、送電線理論、変圧器理論など、電信線や海底電信ケーブルなどを引こうと奮闘している初期の自称“エンジニア”にとって非常に役立つことを提供した。ヘビサイドによって使用されたベクトル数学は、ずっと理解しやすく応用しやすかったし、彼の論文は際だって実用的であった。
従って彼の論文は意欲的に理解され応用された。こうしてヘビサイドの電磁モデルが結果的に古典電磁気学の標準となった。当時は世界中でわずか三十名かそこらの科学者たちしか正確に(実際に)電磁気学に精通していなかったことを忘れないでほしい…ベクトルの見地からも、あるいは四元方程式の見地からも。更にわずかな四元方程式の専門家達によってしか、実際的な研究はあまりされていなかった。
世紀の変わり目に先立ち、主に「ネイチャー」誌において、電磁気学はマックスウエルの四元方程式モデルを使うべきか、それともH/Gのベクトルモデルを用いるべきかに関する短い“論争”が起こった。その論争にはほんの一握りの科学者だけしか巻き込まれず、またそれは大した論争ではなかった。Vectorist(ベクトル学者)たちは単純に四元方程式電磁理論を捨て、ギプスとヘルツのベクトル理論を採用した。これはマックスウエルの実際の理論を本質的に切り詰めることを意味することに注目してほしい。言い換えれば、“現代の”電磁理論において現在見られているよりもずっと多くのことが、電磁場内や回路内で、あるいは電磁場や回路を用いて、実際は可能なのである。それは“現代の”電磁分析では立証すらできないだろう。テスラの実際特許を取った回路を、パレット・オシレーター・シャトル回路分析すれば、このことは明白に立証される。また、生きているシステム(生体系)は、自らの最も重要な(生死にかかわる)制御機能のために、電磁気学の捨てられたその部分を使用しているのだが、現在の理論及び方法論では、これを検出したり、“認めたり”しようとしない。マックスウエル理論をこのように短縮しただけで、従釆の電磁生物効果モデルと、それを応用しょうという努力に対して強力な足伽をはめるという結果がもたらされたのである。
(出典‥「電磁波及び放射線の生物学的影響と癌及び未解決の健康問題」T・E・ベアデン)
この内容は、まさに「マックスウエル電磁方程式から削除されたポテンシャル項の問題」のプロローグとも言える内容です。この問題は、ベアデンによって、ホイッテッカー(Whittaker)の二つの論文に関連付けられています。
1903年ホイッテッカーは、最初の論文で真空中のスカラーポテンシャル内に構造化されている電磁場の縦波を示しました。その後、ホイッテッカーは、全電磁力場が二個のスカラーポテンシャル(注)で表せることを示し、Aharonov-Bohm効果などを予想しました。また、時空の歪みと重力ポテンシャルを、逆に電磁場に変換する方法を示し、この解釈は、1968年のサハロフ(A.D.Sahkarrov)(旧ソ連の民主活動運動家)による「重力場は自然界の基本場ではなく、他の場の合成されたものであろう。」というこの論文へと引き継がれるのです。
そしてこれらの考え方は、現在の物理学における「電磁気と重力の相互排他性」を超え、統一理論を示唆しています。
(注)電磁方程式(ポテンシャルを含んだもの)は、一個のスカラーポテンシャルと三成分のベクトルポテンシャルで表現されるが、ホイッテッカーはこれらを二個のスカラーポテンシャルで記述できることを示した。(97年6・7月)